ゲームへたおじさんドットコム

1977年生まれの文系社会人。どこのクラスにも10人はいたような男のゲーム日記とメモと寄る辺のなさ。

君は最新の両面宿儺を見たか

前回に続いてスマホゲームの広告話を続けるが、最近Twitterに流れてきたもので、なんというかいろいろ苦労しているんだなというものを紹介したい。どうにかして注目されたいという思惑と同時に一線を踏み越えないようにする配慮があるおかげで、なんとも不思議な味わいになっているものだ。前回言及した『スーパーウィザード』の一切何も気にしないで流行り物を全部ぶっ込む態度とは好対照と言えるかもしれない。

 

そんなわけで広告を紹介したいのは『神界奇伝~八百万神の幻想譚~』というゲームだ。日本の神話を題材としたRPGだが、開発のYuanFun Games、日本版運営のSky Entertainment Network、どちらも中国・広州と香港に本社を持つ中国企業だ(両社がグループ企業なのかは調べても良くわからなかった)。サブカルチャー経由の(イメージとしての)「日本文化」ブームの文脈下にあるタイトルということかな。

で、そのTwitter広告でこんなのが流れてきた。

 

最新の「両面宿儺」見ましたか?

日本の神話・伝承が題材なので「両面宿儺」が出てきても別におかしくはない。おかしくはないが……「最新の」とは?

中華スマホゲーの広告は中国人の役者が演じている映像や実際のゲームとはぜんぜん違うCGムービーに若干たどたどしい(たぶんネイティブではない)日本語吹替が被さることでストレンジな味わいが生まれてしまうのが常道だが、本作の動画広告はどうやら日本で作っているようでそういう不安定さはない。ないのだが空気感……アトモスフィアーがなんか不思議な感じになっている。

まず、なぜかTVショッピング風味なのだ。

 

 

喋り方が妙にねちっこい眼鏡の男が「両面宿儺」についてセールストークを始める。頑張ってプレゼンしているという感じだ。それを聞いているほうの男女はあまり広告では見ない類の「別に興味はないが仕事なので聞いている」というダルなバイブスが隠しきれておらず見る者の胸を打つ。これこそが労働のリアルだ。

 

 

眼鏡男の「両面宿儺、ご存知ですよね?」という問いかけに「もちろん知ってますよ」「もちろん」と答える男女。ちょっと不思議な会話だ。「両面宿儺」は有名といえば有名な伝承だが、しかし「もちろん知っている」と答えるほどの一般教養かというと少々疑問だ。もちろん「日本書紀」の記述に限らず、伝奇ホラージャンルの小説や怪談、マンガなどでモチーフとされることもあるので、それで知ったのかもしれないが……。

……と、白々しく書いてしまったが、ここで「ご存知ですよね?」「もちろん」という会話が成立してしまっているのはつまり『呪術廻戦』のことを言外に匂わせているのである。主人公・虎杖悠仁が取り込んだ「呪いの王」である「宿儺」だ。

というか今「両面宿儺」と言ったら真っ先に思い出されるのは「日本書紀」でも2chオカルト板発のネット怪談でもなく『呪術廻戦』だろう。その人気にいっちょ噛みしたいというわけだが、しかしストレートに「『呪術廻戦』でも出てきた両面宿儺がこのゲームにも……」とやるのは避けたい、そこはなんていうか配慮したい色々と……というので無難に削って丸くしていった結果、なんかちょっと不思議な会話が発生してしまった。

 

 

「実際にちょっと両面宿儺、見てみたいなって思いません?」どんな質問だそれは。丸くしていった結果として「何を言ってるんだこの眼鏡」的なセリフになってしまった。

 

 

「見てみたいですけど 見れるんですか?」男のほうが唇に指を当てて思案げ風を装いつつ何も興味がないというバイブスを強めた一方、女のほうがなんとか受け答えしようとして虚無の会話が成立してしまった。

 

 

「最新の両面宿儺のですね 画像があります」ますます丸めて無難な方へ持っていこうとして、もうなんだかわかんない文字列の連なりができてしまった。「最新の」両面宿儺とはなんなのか。「日本書紀」とも関係ないし『呪術廻戦』の宿儺でもない。伝承の存在というより〈概念〉としての「両面宿儺」である。あるいは端的にデータベース消費の〈記号〉あるいは〈モード〉としての「両面宿儺」と言ったほうがいいのかもしれない。だからそれには「最新の」という形容が可能なのだ。そしてその「最新の両面宿儺」とは。

 

 

「カッコいいですね これは」。眼鏡が言うに事欠いて〈無〉のプレゼンに至ってしまった。それを受ける男と女のほうもこれ以上ないほど〈無〉の表情だ。否、〈無〉を超越した〈空〉の貌(かお)になっている。特に男のほうが。俺がもしもテキストサイトブームの頃の流派を受け継ぐブロガーだったら上掲の写真に続けて男の顔に三、四段階くらいズームアップしていくトリミング画像を改行を多用して縦に長くベタベタと貼っていくところだが、生憎と俺は1997年からネットでテキストを書いている男なんでね、退き際は心得ている。

 

 

そうやね。