ゲームへたおじさんドットコム

1977年生まれの文系社会人。どこのクラスにも10人はいたような男のゲーム日記とメモと寄る辺のなさ。

なぜか急に陣取りゲームが遊びたくなって

周期的に「あーなんか、○○みたいなゲームで遊びたいなあああ」みたいな漠然とした気分が続くことがある。オーセンティックなコマンド選択式推理ADVをプレイしたいとか、PS1〜PS2時代のザ・JRPGなゲームをプレイしたいとか、なんでもいいからテニスゲームをプレイしたいとか、手ざわりの良いアクションパズルを携帯ゲーム機でプレイしたいとか、いろんな方面にガバガバなYouTube広告を打ってる中国製の量産型ソシャゲを連続して1ダースくらいプレイして虚無と向き合いたいとか、そんな感じの気分だ。たぶん誰でも、大なり小なり似たような気分になることがあるだろう。

そんなわけで、1月の半ばくらいから俺の中で続いている気分は「陣取りゲームが遊びたい」である。陣取りゲーム……という言い方が正しいのかはよく考えると微妙かもしれんが、要は『クイックス』系のゲームだ。『ヴォルフィード』とか『ギャルズパニック』とか『ダンシングアイ』とかあの手のやつ。

なんで急にそんな気分になったのかは忘れたが、とにかく年明けからしばらく経ってそんな気持ちがムクムクと湧いてきたので、とりあえずSteamでクイックス系のゲームを探してみた。

これはしょうがないのだけど、『ギャルズパニック』以降のこのジャンルは何らかのお色気要素とセットになっていることが多い。切りとったフィールドから女の子のセクシーな絵が見えるようになるというフィーチャーだ。というか現在のSteam市場ではむしろ低価格お手軽ソフトエロティックゲームの「ゲーム」部分を言い訳的に成り立たせるためのメカニクスとして陣取りゲームが採用されていると言っていい。エロが主で陣取りゲーム部分は従だ。

なので実際のところユーザー評価はあまりよくないゲームばかりだ。それにユーザーレビューでは「誰でもクリアできるような簡単な内容なので良い」というような基準で陣取りゲーム部分を評価してたりするので(つまりゲーム的な歯ごたえがないほど=エロご褒美を簡単に見ることができるほど良い、というわけだ)、この中から良い感じの陣取りゲームを選ぶのは難しいかもしれない。

とはいえそんな中でも比較的評価が良いほうでレビューでもゲーム部分のやり応えがそこそこあるような記述があった『モココX』を買ってプレイしてみた。

これは『ギャルズパニック』直系の、切りとったフィールドから女の子の絵が見えるタイプのゲームだ。海外製の作品だが、絵は(ちょっと古い絵柄ながらも)アニメ調、ゲーム中のメッセージや台詞も日本語フルローカライズされている。されているのだが……なんというかその翻訳品質があまりよくない。いや、よくないというかなんというか、直訳すぎて意味が取れない、むしろストレンジな感じになっている。

まあ陣取りゲームなので別に物語がわからなくてもぜんぜん問題ないのだが、この作品、ゲーム中に女の子や敵キャラクターがやたらと喋る。たぶん日本語ネイティブではない声優さんがけっこう熱演しているのだが、前述のストレンジな翻訳品質の日本語メッセージを、日本語の台詞回しとして流暢ではあるけど不安定な部分もある喋り方で延々と聞かされるので、夜中にプレイしているとちょっと気が狂いそうになる(隣の部屋で寝ようとしていた妻には「怖いからやめて」と言われた)。

 

「その同じ夜に、私に人生が興味深く、また脅されていると感じる」(最初の4ステージのあいだ何度も聞かされる)
「量より質ゥー!」「時計のような規則正しさが、いま必要です」(たいへん有能そうな言い方で誇らしく宣言される)
「私は挑戦し続けるの……私はたくさん欲しいの?」(すごく消え入りそうな声で問われる)
……などのなんとも例えようがない台詞に脳味噌を支配される。あ、陣取りゲームとしては、まあなんというか大味だけどそこそこ楽しめる。

 

だが当然『モココX』だけでは陣取りゲームプレイしたい欲を満たすことはできず、たまたま秋葉原のHeyで『ヴォルフィード』が稼働しているのを見つけたのでガシガシとコインを投入したりした。難しい。しかし改めてプレイすると妙にBGMががかっちょいい。50年代SF映画的な雰囲気がある。こんなだったのだな。というわけで仕事帰りに寄れるときは寄るようにしている。

 


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だがそうそう秋葉原に寄れるというわけでもない。というわけでアーケードアーカイブスシリーズとして配信されている『クイックス』を購入して寝る前に1時間ほどプレイしている。

 


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後続の作品に比べるとオリジンであるこのゲームはたいへん難しい(ルール的に、フォロワー作よりも厳しい部分がある)。そして完全にアブストラクトなゲームで、不気味で静謐な美しさのようなものさえ感じる。BGM的なものは敵である「クイックス」が回転しながら不規則に移動する際に発しているのであろう不穏なブーンブーンという周期的ノイズだけ。正体不明のクイックスという存在を囲み、移動範囲を狭めて、殲滅する。人類とはまったく違う、意思疎通の不可能な知性体との不幸なファーストコンタクトであり終末戦争でもあるかのような、冷たい、仮構のバトルフィールド。1981年のゲームが一周二周回って今見ると強烈な未来感覚を与えてくる。なんというかっこいいゲームなのだろうか。だがとても難しい。

 

さてここで自分の内面との対話を試みる。なぜ俺は急に陣取りゲームが遊びたくなったのか……その理由はわからないままだが、そのとき心に思い浮かべていた「陣取りゲーム」とは果たして『クイックス』や『ヴォルフィード』だったのか?

いや確かに両作とも改めてプレイしてみたことで新たな魅力に気づくことができたしとても面白いのだが、「陣取りゲームが遊びたい」と思ったときに想定していたゲームとは微妙に離れるのではないだろうか。だって陣取りゲームが遊びたいっていうときに、まず最初に『モココX』のようなゲームに行くだろうか? 『クイックス』も『ヴォルフィード』も移植版がたくさんあってプレイしようと思えばそこそこプレイしやすいゲームなのに……というところではたと気づいた。俺がプレイしたいのは正調陣取りゲームの系譜から分岐したアレンジ陣取りゲーム、それも具体的には『ぎゃるぱにX』だったのだと……だからギャルの出てくる陣取りゲームを無意識に最初に探したのだな。なるほどそうか。

 

『ぎゃるぱにX』は同人サークル「D5.」制作の『To Heart』二次創作同人ゲーム。たぶん90年代末から2000年代初め頃に頒布されたゲームだ。その後、2004年頃に無料公開されたので一部ではけっこう有名なゲームだと思う(俺はそのタイミングで知ってプレイしていた)。

直接的には『ギャルズパニック』から着想を得た陣取りゲームだが、同人ゲームらしい大胆なアレンジ&リミックスとして、そこに弾幕シューティングの要素がプラスされている。敵キャラクターが有名シューティングゲームのどこかで見たことのあるような激烈な弾幕で攻撃してくるのだ。そして他の『クイックス』フォロワーゲームとは違い、プレイヤーは自陣内でその弾を避けねばならない(つまり、陣地を広げる線を引いているとき以外は無敵という陣取りゲームのルールにおけるセオリーが否定されているのだ)。そのかわり、プレイヤー機は自陣の枠線上だけではなく、陣地内であれば自由に移動できるのだが……最初はいいが後半はかなり難しい。難しいが、敵や弾自体はわりとのんびりした動きなので頑張ればそれなりになんとかなる(ギャル絵のコレクション回収にこだわらなければ)、というのが良かった。

 


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このゲームを当時かなり熱中して遊んでいた記憶があり、それが急に無意識下に甦ってきたというのが今回の気分の理由だったのだと思う。

そんなわけで、旧PCのHDDから当時のインストールデータをサルベージした。Windows 10環境でも特に問題なく動くようなので、あとはDirectInput対応のUSBセガサターンコントロールパッドを見つければまたちゃんとプレイできるだろう(さすがにキーボードでの操作は難しい)。USBセガサターンコントロールパッド、この部屋の、どこかにあるはずなのだが……そう、どこかには……たぶんある……。

ところでインストールデータをサルベージしてから調べて知ったのだが、なんとこのゲームは現在でもサークルのWebページからダウンロード可能だ。プレイしたことがない方はぜひ遊んでみてほしい。

mapleford.net

 

……なんてことをやっていたら、なんとこの3月末にアーケードアーカイブスで『ヴォルフィード』が配信されるとのニュースがあった。嬉しい! 俺が陣取りゲームをこの1ヶ月半ほどいろいろとアレしていたのがバタフライエフェクトして今回のアケアカ配信に繋がったのだと思うと嬉しい!(狂人の思考回路)

www.famitsu.com