ゲームへたおじさんドットコム

1977年生まれの文系社会人。どこのクラスにも10人はいたような男のゲーム日記とメモと寄る辺のなさ。

東京ゲームショウ2022雑感、それと「時代の小さな記憶」は書き残しておこうぜ的な話

もう2週間も過ぎてしまったが、TGS2022に行ってきたので感想をぼんやりまとめておこう。

 

コロナ禍で2020、21とオンライン開催が続き、久し振りのリアルイベントだった今回。主催者発表では15〜18日までの4日間での来場者数は約13万人超と、前回リアル開催だった2019年の約26万人の半分ほどで淋しい感じはする。

ただし今回は小学生以下の来場は禁止で、ある程度の人数に制限するため用意されたチケットは15万枚ほどだったとの報道があったので、そういう意味では想定内の来場者数ということかもしれない。

こういう大人数が集まるイベントに参加するのが久々だったこともあり、俺個人としてはなかなか盛況だったような肌感だった。TGSあわせで任天堂・SIE・MSの三大プラットフォーマーが開催前日や初日に今後のラインナップを発表するオンラインイベントを行い、俺の見ていた範囲内の話だがSNSでもそれなりにお祭り気分が醸成されていたように思う。

 

……とはいえ、いつもの会場入り口大型広告スペースがスカスカだったのは淋しい。これも時代かねえ。

 

さて、全体的な所感としては

  • Meta Quest、Pico neoという低価格帯VRヘッドセットが力を入れた宣伝・ブース展開をしていた(やはりVRはリアルで体験しないと伝わらないので)
  • DiscordやTikTok、clusterなどの(ゲーマーと親和性の高い)ネットサービスの出展が目立ち、個別の「ゲームタイトル」というよりは「ゲームシーン」全般のショーという性格が強まった
  • PCパーツメーカーやゲーミングギア関係の出展が大きく増え、ゲーミングPC市場の確実な盛り上がりを感じた
  • インディーゲームのブースはカオティックな雰囲気だった
  • スマホアプリ系の出展は(もちろんあったが)2019年までのTGSと比べて静かだった(リアルイベントに金をかけて出展するメリットが特に薄い分野のため)

という感じ。以下、ざざっとメモ。

 

VR関係

会場入り口までの宣伝のぼりは中国の新興VRメーカーPICOがジャック。Meta Quest大幅値上げの間隙を縫って俄然注目を集めるようになったので、まさに今こそ推して参るといった感じなのだろう。

 

会場内でも大きなブースを構えていた。

 

PICOの近くにはMetaもMeta Questの大きなブースを。PICOのブースは発表会を行うためのブースという感じだったが、Metaのほうはユーザー体験会にフォーカスしたブースだった。外側からはどんな感じかちょっとわからないという弱みはあったかな。体験会にわりと人は並んでたけど。

帰ってきてからニュースを見て知ったのだが、実はカプコンブースではPS VR2の体験会が催されていたらしい。そういう意味では、VRデバイスの次の覇権を巡る争いが静かに繰り広げられていたイベントだったのかもしれない。

 

ネットサービス関係

ゲーマー御用達コミュニケーションツール No.1ことDiscordのブース。Discordはとにかくめったやたらとフランクな感じでユーザーに絡んでくる感じのコミュニケーションをブランドイメージにしているが、ブースには外国人スタッフがたくさん滞在していて、おー多国籍な感じーと思った。

 

clusterはソーシャルVRサービス、流行りの言葉で言うところのメタバースプラットフォーム。ユーザー同士のコミュニティサービスというよりは企業や団体向けにVR空間でのイベントを開催できる機能を手厚くサービスしているところに特徴がある。日本企業ということもあり、ニコニコやVTuber関係のイベント、一般企業や自治体のVRイベントなどでclusterのサービスが使われることが多い。直接的にゲームと関係しているわけではないが、ゲーマー市場に隣接した領域でビジネスをしている企業ということでけっこう大きなブースを作ってアピールしていた。

 

言わずと知れたTikTok。出展スペースが「ビジネスソリューションコーナー」であることに注目。ゲーム関係企業はやはりTikTokをよく使うような年齢層にリーチしたいわけだが、従来のSNSプロモーションの延長線上ではなかなか刺さらないのでなんとかTikTokを活用したい……そういうビジネス客向けのアプローチということだろう。インフルエンサーを招いてTikTokマーケティングについてのトーク&レクチャーみたいなことをやっていた。

 

こんな感じで、ゲームプロパー企業ではない、でもゲーム業界とは隣接しているところの企業の出展が個人的にはけっこう目立ったTGSだった。

 

ここで数年後に味わうための「時代の1ページ」的な写真を貼っておこう。

 

ブロックチェーンとNFTでGameFiしてPlay-to-earnでWeb3ゲームの未来へレディーゴー! 否、未来は今、フューチャーイズナウ! という感じの企業のブース。その業界のキーマンがトークセッションしたりプレゼンしたりミニシンポジウムしたり……みたいなことをずっとやってた。マスコミの人はそこそこ来てたみたいだけど、これは正直、あまりTGSでやる内容ではないかなと思ったな。まあこういうとこでやった、という実績自体が重要なのだろう。

 

PCゲーミング関係

閑話休題。PCゲーミング関係のブースをざーっと紹介。

 

ValveのSteam Deckは実機の試遊にたくさん人が集まってた。なかなかの注目度。やたらと開放感のあるブースのデザインもなんか印象に残る。

 

今までのTGSでもIntelやAMDなどの最大手半導体メーカーがPCゲーミングのPRのためにブースを展開することはあったが、msiなどのパーツメーカー大手や、サードウェーブ(ドスパラ)のゲーミングPCブランド・ガレリアが大きなブースで出展していたりと、今回はより広い範囲の企業が参加していたように感じた。こういうの見ると日本国内でもPCゲーミング市場が拡大してるんだなあと思う。

AVerMediaのような配信関係のハードやガジェットのメーカーもいろいろ出展していた。今のPCゲーミングは配信とセットで消費・受容されているという空気感を強く感じるね。

 

そして今やイロモノではなく「比較的安価な高機能オフィスチェア」として完全に定着した感のあるゲーミングチェア関係では、世界で初めて「ゲーミングチェア」という製品カテゴリを作ったDXRACERをはじめ、イトーキやニトリなど一般家具分野のメーカーもゲーミングチェアをアピールするために出展。一般家具メーカーのゲーミングチェアはあまり家電量販店には置いてなくてそれぞれのショールームとか実店舗に行かないとお試しができないので、TGSはわりといいアピールの場だったんじゃないのかなと思った。

 

インディー関係

インディーゲームコーナーの風景。会場の端っこに行くほど通路が狭く、各ブースのスペースも小さくなっていくのだが、反対に人口密度も高くなってなかなかにカオティックであり、次代の熱気を感じた。マクガさんが、インディーコーナーはスラム街で、今回のTGSで唯一生身の人間がいて、人間の活気を感じられる!……というようなことをSNSで言っていたのを事前に読んでいたからかもしれないが、確かにいい意味でスラム街っぽい感じはあった(いい意味?)

 

インディーブースでは「来日不可のため本ブースでの展示はなくなりました」という張り紙がされているブースもちらほらあり、これも「時代の1ページ」として記録しておいたほうがいいだろう。

 

その他

どでかいブースだが、見慣れないゲームのメインビジュアルが展示されてるな、金がうなるほどある中国系のスマホアプリ企業だろうか……と思ったら集英社ゲームズだった。おわー。

出版業界の企業がインディーゲーム界隈からフックアップして育てたり磨いたりしてパブリッシュしていくという流れが最近流行ってきている気がするが、もう一方の大手出版社による似たような試みであるところの講談社ゲームクリエイターズラボのほうは前述のインディーゲームコーナーで慎ましく(といってもインディーコーナーでは大きなブースのほうだったが)やっていたのとは対称的。やったるで!という勢いを感じる。

瑞起の「X68000 Z」のモック展示。まだ詳細も発表されてなくて、本当にただのモックがガラスケースに入って、特にPRのポスターやのぼりなどもなく4Gamer.netブースの隅っこのところにちょこんと展示されているだけだったのだが、中年男性たちがスマホで写真を撮るためにひっきりなしにやってきていたし、何なら並んでいた(俺も並んだ。中年男性なので)。ペケロッパ、リアルタイムではついぞ実物を見ることも叶わなかった俺にとって「憧れのゲーム(マシン)」筆頭なのは確かだ……。

 

今回物販コーナーは駆け足でしか見られなかったのだが、物販であっても何らかのイキりを忘れないコジプロはさすがだなと思った(次回作? なのか何なのかまだぜんぜんわからないティザービジュアルらしきものが唐突に物販ブースの壁で発表されている。QRコードを読み込むと同じビジュアルが貼られたサイトが見られるが、今のところそれ以外には何もない)。

 

TGSではいつもここのスペースがなんか好きです。

 

会場の一番端には、久々のリアル開催なのである種のメモリアル企画ということだろうか、今までのTGSの歩み的なパネル展示コーナーがあった。同じような趣旨の記事がファミ通.comにも掲載されていたから参照してほしい。

そう、最初の頃は春と秋の年二回開催だったんだもんなあ、往事の次世代機バブルの勢いよ……という感じだ。俺が初めてTGSに行ったのはたぶん2002年だと思うが、Blogでレポートを書いた一番古いのは2003年のやつだな。というわけで今まで書いたTGSレポをリンクしておこう。今は雑記BlogにしているもうひとつのBlogのほうで書いてたやつだ。

 

これ以降はしばらく行ってなくて、次に行ったのは2011年。レポートはBlog向けには書いてなかったけど、記録として昨年、このBlogでサルベージした。

 

2011年以降にも何回か行ってるんだけど*1、この頃になるとBlogに書かないでTwitterとかFacebookにちょこちょこ書くくらいになっちゃったんだよね。いかんね。

ある程度まとまったテキストにして公開しておくことで、時間が経ってからの味わいが深まるわけなので、これからはこういうイベントに行ったらなるべく意識的に書き残しておこう。話題作・超大作とか新ハードの発表、みたいないわゆるニュースバリューのあることは各種ゲームメディアのアーカイブを掘ればいいだろうけど、そういうのから零れ落ちるようなこまかいことや、現場で感じた肌感みたいな個人の視点からの記録なんてのは、こうやって書いておかないと残んないからね。コロナ禍になり、俺は45歳でアラフィフの範囲内になって、こういう「時代の小さな記憶」みたいのは残していくべきだという思いがちょっと強まっている。

2020年の2月に行ったJAEPO 2020のレポをこのBlogに書いていたのだけど、今回のTGS 2022レポを書く際に読み返して、もうすでに感慨深いものになってるなこれと思った。

2020年の2月初頭。このほんの1ヶ月後くらいにはもうぜんぜん状況が変わっちゃうわけだからね。このレポートではJAEPO 2020と同日にメッセで開催されてたライブエンターテイメントEXPOという別イベントについても触れていてそれがすごく盛況だったことを書いているんだけど、「ライブエンターテイメント」ですからね。この1ヶ月後にはそれがまったくできなくなるわけですよ。あの会場に出展していた企業のうち少なくない数は廃業することになったのかもしれないわけだからね。いやーなんていうか、「時代」って感じがするよ。

みんなもこういう、すぐに揮発してしまう「時代の小さな記憶」は書き残しておこう! とぜんぜんTGSとは関係ない結論を出して〆とする。

*1:後で確認してみると、2013、15、16,17には行っていた。